日本の労働人口低下の中、業務効率化と労働力の確保は企業において重要な課題となっております。特に中小企業では従業員の確保は経営の重要課題となっております。
管理部門では、慢性的に人手が不足している中小企業が多く、残業など従業員への負荷が高くなっております。その結果、離職率も高くなり、さらに担当者の負担が増えるという負のスパイラルに陥っているケースが多くみられます。管理部門の業務は、定型業務がある程度存在します。その個々の業務における作業量は多くないものの、「塵も積もれば山となる」ではないですが、それらの業務が増えると業務負担も大きくなります。
また、生産部門においては、売り上げを増加させるため日々努力をしております。生産性の向上が必要な中で、集計作業などの細かい定型業務が多く存在します。こういった反復性の高い定型作業を減らせば、より生産性の高い業務に集中することで、売り上げを増加させることができるようになります。
事務作業の自動化
かつて、工場で手作業で実施してきたブルーワーカーの業務は、産業革命以降に機械化され、大幅に生産性が向上しました。現在では多くの工場で産業用ロボットが動き、人間はロボットの作業を監視し、管理するのみとなっております。では、ホワイトワーカーの業務はどうなっていますか。かつてそろばんを使って紙の帳簿を作成していた作業は、1人に1台のPCが提供され、皆がデスクに向かって仕事をし、紙の情報資産も削減されてきました。これにより大幅に効率が上がりました。しかし、まだ工場のように自動化は進んでいません。RPAは、ホワイトワーカーの事務作業を自動化するロボットということになります。
当社では、中小企業の業務効率化や人材不足のような経営課題を解決するツール・手段としてRPA(Robotic Process Automation)に関わるサービスを強化しております。RPAは、パソコンで行なっている作業を自動化できるソフトウェアロボット技術のことです。パソコンで日常的に行なっているキーボードやマウス操作などの操作手順を記録し、それをRPAツールが高速で、正確に実行します。
最終的には上で記載したホワイトワーカーの事務作業の自動化が目標となるのですが、実は現状のRPAでそこまで達成することは難しいです。現状のRPAでできるのは、一部の単純な事務プロセスを自動化する程度になります。現在は、Class1と呼ばれるところまではRPAで実施できるようになっていますが、今後Class2、Class3と進むことで、ホワイトワーカーの作業の自動化が見えてきます。
RPA導入のメリット
RPAにも得意・不得意があります。大前提としては、RPAは「判断を伴わない、単純な作業」を実施します。例えば、「写真を開いて、コピーしろ」と命令されれば正確に実行します。しかし、写真の中身を見て、AさんだったらYというフォルダにコピーをし、BさんだったらZというフォルダにコピーをしろという判断が必要になると、これはAIの業務範囲になってきます。RPAの主な長所・短所は以下の通りです。
【長所】①正確に作業を実行する。②作業スピードが圧倒的に速い。③24時間365日稼働する。④ロボットは削除しない限り残る(退職しない)。【短所】①判断することはできないので、決められた命令しか実行できない。そのため、想定外の例外処理などは対応できない。
また、RPAはシステムを跨いだ連携が得意です。マクロやVBAなどもプログラミングにより自動化を図ることができますが、他のシステムとの連携はほぼできません。基幹システムの一部データを自動で取得して、エクセルと経理システムに登録して、完了したらSlackでチャットを発信するなどのように複数のシステムを跨ぐ場合は、RPAが向いています。また、大量のデータ処理を実施する場合も、24時間365日稼働するRPAならば、夜中にバッチ処理をすることもできます。
その他にもRPAを導入するメリットは、業務効率化や生産性向上に加え、人的ミスの削減、より付加価値が高く生産性のある仕事に集中、人手不足の解消、といったことが挙げられます。
RPAが向いてる作業 | RPAに向いてない作業 | |
作業手順 | 単純 手順が単純で判断を伴わない | 複雑 手順が複雑で判断を伴う |
業務の型 | 定型 一定のルールが決まってる | 非定型 ルールが決まっていない |
実施時期 | 定期 日次・月次など決まったサイクルで実施している | 不定期 発生頻度が不定期 |
作業内容 | 反復 同じ作業を繰り返す | 都度 反復を伴わず、都度対応が必要 |
システム化するか、RPAを導入するか
RPAの導入を検討する際にもう一つ検討すべき事項があります。システムを構築するか、RPAを導入するかという検討になります。当社では、業務量が多い作業に関してはシステム開発により対応した方が現状では効果は高いと考えております。このシステム化では、システム部門が主導し業務プロセスを検討した上で、外部に委託して構築していきます。完成までの多くのプロセスがあり、時間もかかりますが、業務の効率化に大きく寄与します。一方で、高い構築費用が発生するシステム化では費用対効果が少ない細かな作業を自動化するにはRPAが向いています。
量が多い業務はシステム開発等のIT投資により効率化し、システム化しても費用対効果が少ない細かな業務でRPAを利用することにより、効率的にRPAを活用できます。